ビンタ特集 —新旧エヴァ名シーン比較④—

 「びんた・・・平手で他人のほおを打つこと。」(明鏡国語辞典より)

 感情が高ぶった時、人は思わず目の前にいる者の頬を打ってしまうことがあるらしい。それはエヴァンゲリオンのキャラクターでも同様である。今回はエヴァンゲリオンの珠玉のビンタシーンを見ていきたい。

綾波→シンジ

綾波「あなた、碇指令の子どもでしょ?」
シンジ「うん」
レイ「信じられないの?お父さんの仕事が」
シンジ「当たり前だよ!あんな父親なんて!」*1

 このやり取りの後に、シンジは綾波にビンタされてしまう。これはシンジが初めて綾波の家に行った後、NERVの長いエスカレーターで二人が会話しているシーンだ。*2この時、綾波碇ゲンドウ以外の人物に心を開いていなかった。綾波にとって大事な存在であるゲンドウをシンジが「あんな」父親と言ったために、綾波は激怒したのである。家に侵入されてあんなことをされても怒らなかった綾波が急に怒ったため、シンジはさぞ驚いたであろう。それだけ綾波にとってゲンドウの存在は大きいのである。
 ただ、シンジが「あんな」父親という気持ちもよく分かる。11年も放置されたあげく、呼び出されたと思ったら急に意味不明な物体に乗せられて怖い思いをしているのだから。転校早々クラスメイトに殴られるなど、過酷な体験もしている。あれで逃げ出さない方がおかしいだろう。

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シンジの頬にジャストミート。(『新世紀エヴァンゲリオン』「第伍話 レイ、心のむこうに」より。)

  綾波の右手は正確にシンジの顔面を捉えている。白鵬の張り手並みの正確さである。

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ビンタされて赤くなるシンジの頬。(『新世紀エヴァンゲリオン』「第伍話 レイ、心のむこうに」より。)

 威力もなかなかだ。

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新劇場版でもジャストミート。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。)

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アニメ版より赤くなっているかも。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。)

 綾波はほとんどの人に心を開いていないが、心を開いた人のためには割と何でもしちゃうタイプだ。*3綾波にとっての大事な人は侮辱しない方が身のためであろう。

アスカ→3バカトリオ
 テレビシリーズの「第八話 アスカ、来日」で初めてアスカと会った3バカトリオ(シンジ、トウジ、ケンスケ)。タイミング悪く風が吹いてきたことで、彼ら3人はアスカのパンツを見てしまう。アスカはトリオに強烈なビンタをお見舞いするのであった。

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痛々しい3バカトリオ。(『新世紀エヴァンゲリオン』「第八話 アスカ、来日」より。)

 手形も付きしっかりと腫れている。相当な威力だろう。ご存知の通りアスカは喧嘩っ早そうな性格の持ち主だ。できることなら怒らせない方がいいだろう。

ミサト→リツコ
 普段は仲良しのミサトさんとリツコさんだが、二人の間にも緊張が走る時がある。テレビシリーズの「第拾六話 死に至る病、そして」ではビンタにまで発展してしまった。
 第拾六話では、シンジを乗せたEVA初号機が第12使徒レリエルディラックの海に取り込まれてしまった。リツコは初号機の強制サルベージを計画するも、それは機体の回収を最優先とするもので、パイロットの生死は問わないとされた。それを聞いたミサトは激怒、リツコの右頬をビンタした。
 ミサトにとってシンジはただの部下ではなく、普段は一緒に暮らす弟のような存在でもある。よって、ミサトがビンタするほど怒るのも分かる。ただし、リツコの言うように初号機が取り込まれてしまったのはミサトの作戦ミスである。それも踏まえるとビンタするのはやりすぎだろう。ミサトの尻拭いをした上にビンタまでされるリツコはかわいそうである。

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メガネが吹っ飛んでいる。(『新世紀エヴァンゲリオン』「第拾六話 死に至る病、そして」より。)

 少し見えにくいが、リツコのメガネは吹っ飛んでいる。私の経験上、真横からの強い衝撃に対してメガネのフレームは弱い。これほどの衝撃を受ければ、曲がったり折れたりしてもおかしくない。リツコはこの後、このメガネを拾ってかけている。曲がることすらしていなさそうだ。リツコの給料は高そうなイメージがあるが、メガネも衝撃に強い高いものを買ったのだろうか。

 新劇場版でも、第拾六話に類似する「ミサト→リツコ」のビンタのシーンが登場する。しかし、本編に登場することはなく、『:序』最終盤の次回予告に少し出てきただけだった。個人的には第拾六話のビンタシーンはお気に入りなので、『:破』でも見たかったものである。
 次回予告のビンタシーンはぱっと見では第拾六話に似ている。しかし、いかんせん短いシーンであり、声も入っていないので、どのような想定で作られたものかは分からない。

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ミサトもジャストミート。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。)

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またまた吹っ飛ぶメガネ。(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。)

 非常に見にくいが、またメガネが吹っ飛んでいる(画像左下)。これもなかなか強烈だ。『:破』で仮にこのシーンが登場していれば、間違いなく見せ場の一つであっただろう。

 現在BS日テレで『新世紀エヴァンゲリオン』が再放送中、ABEMAでは新劇場版が期間限定で公開されている。ぜひビンタシーンに注目しつつ見てほしい。




*1:新世紀エヴァンゲリオン』「第伍話 レイ、心のむこうに」、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。

*2:このエスカレーターは異常に長い。実際に乗ったらとても怖いだろう。手すりの外側になんのカバーも無さそうなのも恐怖をあおる。

*3:テレビシリーズの「第弐拾参話 涙」での自爆、『:破』での使徒への単騎特攻などはシンジのためにとった行動であったと言えよう。