笑えばいいと思うよ —新旧エヴァ名シーン比較①—

 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズは1995年放送開始のアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のリビルドであり、両者には共通するシーンが多い。その中でも名シーンと言われるところを見返し、新旧の比較をしてみたい。

 今回取り上げるのは第5使徒ラミエル戦(『新劇場版:序』では第6の使徒)の後、シンジが綾波を助けるシーンである。とても有名なシーンなので、何回も見たという人も少なくないだろうが、改めて見返してみたい。
 新旧で若干の違いはあるが、このシーンの台詞はだいたい以下のような感じである。

 

シンジ「自分には何もないって、そんなこと言うなよ。別れ際にさよならなんて、悲しいこと言うなよ。(嗚咽)」
レイ「何泣いてるの?」
シンジ「(嗚咽)」
レイ「ごめんなさい。こういうときどんな顔すればいいのか分からないの。」
シンジ「笑えばいいと思うよ。」*1

 

 このシーンは3パターン存在する。1つ目はテレビシリーズの「第六話 決戦、第3新東京市」のもの、2つ目は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生*2のもの、そして3つ目は『:序』のものだ。『シト新生』の前半はテレビシリーズの総集編のような内容で、新たに付け加えられたシーンや修正されたシーンもある。「笑えばいいと思うよ。」周辺のシーンも修正されたシーンの一つで、相当綺麗になっている。
 では、それぞれの画像を比較してみよう。まずはシンジが「笑えばいいと思うよ。」と言うシーンから。上からテレビシリーズ第六話、『シト新生』、『:序』の順だ。 

笑えばいいと思うよ

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新世紀エヴァンゲリオン』「第六話 決戦、第3新東京市」より。

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『DEATH (TRUE)2 』より。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。

 『シト新生』(真ん中)は14歳とは思えないほど大人びている感じがある。逆に、テレビシリーズ第六話は14歳にしては少し幼い印象があるようにも感じられる。年齢とぴったり合っていそうなのは『:序』のシンジだろうか。いずれにせよ、綾波が助かったことに涙を流すシンジ君の優しさが伝わる名シーンであることに間違いはない。
 また、ラミエル(第6の使徒)戦の夜は満月なのだが、その明るさも各作品で違いがある。『シト新生』と『:序』を比べてみると一目瞭然である。『シト新生』の時はとんでもないスーパームーンだったのではないかというくらいの明るさだ。プラグスーツの襟の赤がはっきりと感じられるほどである。

 次に取り上げるのはシンジに「笑えばいいと思うよ。」と言われて笑う綾波である。

シンジに「笑えばいいと思うよ。」と言われて笑うレイ

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新世紀エヴァンゲリオン』「第六話 決戦、第3新東京市」より。

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『DEATH (TRUE)2』より。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。

 第六話の綾波は相当しっかりと笑っている。第六話に至るまでほとんど無表情であった綾波にいきなりこんなに笑いかけられたシンジはさぞ困惑したに違いない。リアルタイムで見ていた視聴者も驚いたことだろう。エヴァのキャラクターデザイン担当の貞本義行がこの表情を気に入らなかったという情報もある。*3
 これに対し、『シト新生』と『:序』の綾波は柔和なほほえみを浮かべている。綾波的にはこちらの方が自然だろう。
 それにしても『シト新生』は月明かりが強すぎる。この時日本中のほとんどの電力がポジトロンライフルに集められているため、電灯などはついていないはずだ。また、ヤシマ作戦のために二子山には電気が通っていたとしても、使徒の攻撃によってほとんど機能していないのではないか。よって、このシーンで周囲に電灯があるとは考えにくい。やはりこれは月の明るさだ。それとも月明かりはそれほどだがエントリープラグ内のL.C.Lの反射がすさまじいということなのだろうか。

  残念ながら『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開は当初の6月27日の予定から延期されることが決まってしまった。しかし現在、株式会社カラーのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCM4FwhxLYLHlOSPnfxmxSQw/videos)において『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、『:破』、『:Q』の三作が無料で公開されている。(4月29日23:59まで)こんなチャンスはなかなかないので、上記のシーンに注目しつつ見てほしい。

*1:ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より。

*2:シト新生』は前半のDEATH編、後半のREBIRTH編に分かれる。DEATH編を修正したのが『DEATH(TRUE)』であり、それをさらに再修正したのが『DEATH (TRUE)2』である。今回は1997年の劇場公開版であるDEATH編が手元になかったため、『DEATH (TRUE)2』から画像を引用した。

*3:ピクシブ百科事典 「笑えばいいと思うよ」より。なおこのサイト以外のソースは見つけることができなかった。